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「……うぐっ」
何か後ろでうめき声が聞こえるが徐庶は無視して進む。
そもそも、道順は覚えているので道案内はいらないのだ。
つまり、送っていくとは監視すると同義語だ。
後ろから慌てたように北郷が駆け寄ってくる。
「え、えと、何か怒ってる?」
徐庶はその言葉にクルリと反転すると、北郷を見据える。
「いんや。
そもそも、怒る程も北郷さんに興味はないよ」
それだけ言うと徐庶は前へ向き直り、歩き始める。
再び気まずい空気が流れるが徐庶は知ったことではないと、ただただ前に進む。
実際、黒蜀の将である徐庶が漢朝側の人間と親密になる必要は皆無と言っていい。
その事は北郷もわかっているし、国同士の関係性で言えば既に黒蜀は漢朝と戦をしているのだ。
しかし、頭で分かっていても心が納得しないのだ。
何で。
何で。
「何で黒蜀に入ったんだ?」
その言葉で徐庶の足が止まる。
北郷はマズったと感ずいたが、既に開いた口は止まらない。
喉まで迫り上がった言葉を呑み込む事が出来ずに吐露する。
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