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「諸葛亮ちゃんと知り合いだった点から見ても益州の出身じゃないんだろ?
わざわざ益州まで行って黒蜀に仕官したりなんか…」
徐庶は無視して再び足を進める。
門は既に近くに見え、門前には自分が繋いだ馬が、此方を見て嘶(いなな)いた。
黒毛の駿馬だ。
まるで手招きするように首を動かし嘶く姿に、つい頬を緩める。
その馬は徐庶が使者として出向く際に、黒田が徐庶に与えたものだった。
黒田にとっては、ただ使者として格好のつく馬を与えたに過ぎず、徐庶もその事は弁えていたが、やはり慕う人から贈り物をされるというのは心を動かさずにはいられないものだ。
それも、初めてなら尚更に。
思わず駆け出そうとした時、人影が断った。
「ねぇ、質問に答えてよ」
断ったのは北郷だ。
立ち塞がるように前に出た事は、確かに強引だったかもしれない。
だが、今を逃せば徐庶と話す機会はもうないかもしれない。
そう思うと居ても立っても居られなかったのだ。
しかし、そんな北郷の考えは徐庶にとってはいい迷惑だ。
徐庶の心は、いよいよ冷めに冷め、冷えきった。
「あんたの尺でオイラを測るな。
さっきから勘違いも甚だしいよ」
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