両雄、会い見える。

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「何故、黒蜀に居るか? 決まっている。 オイラが黒田熊熊という人物に惚れたからさ」 北郷は二の句が告げれなかった。 ただ息を呑んだ。 きっと徐庶は黒田に弱味を握られているんだろう。 そうでなくても、何か後ろ暗い秘密が……。 そう思っていた。 だが、違った。 『惚れたからさ』 あまりに堂々と、誇らしく。 そう、彼女の言った言葉は単純で。 でも、だからこそ、北郷は何も言えなくなった。 ◆◆◆ 初平4年(194年)。 虎牢関。門前。 「私の名は曹操孟徳。 貴方が黒田熊熊ね?」 「いかにも。 お初に御目にかかるな曹孟徳殿」 馬に跨がる俺の目の前には、曹操とその部下であろう曹旗を掲げる兵士達。 そう、曹旗だけ、この場で俺と対峙しているのは曹操軍だけだ。 「魔王がどんな男か見てみたかったけど、思ったより可愛い顔してるのね」 「は?へ?いや、そんな事を言われたのは初めてだな」 そう言って苦笑し頭を掻く俺を、曹操は本当に可笑しそうに笑う。 「まったく、本当にあの奇計を弄した人物とは思えないわね」
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