政略結婚と、張任の思い出。

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しかし、だからといって孫尚香を嫁がせる訳にはいかない。 確かに、十代そこそこの娘を嫁がせる話は歴史的に見て無い話ではない。 無い話ではない。が、だ。 「シャオはまだ子供でしょ!」 蓮華は、それとこれとは話が別だと言わんばかりに怒鳴る。 「シャオ、子供じゃないもん!」 「そういう所が子供だと言っているの!」 「シャオだって!!シャオだって“孫家の女”だもん!!」 孫家の女。 『呉のため、呉の民のため、そして、我らを慕い集う将兵のため、その全ての笑顔を守るため。 我ら“孫家の女”は、その礎となるために、その身を捧げるのだ』 それは彼女達の母親、孫堅が口癖のように言っていた言葉だ。 この“孫家の女”という言葉に、雪蓮は血が滲むほど拳に力を込め、口を開きかけ―― 「孫策様ぁーー!!」 ――渡り廊下から、一人の兵士が走り込んできたため、一旦口を閉じて言い直す。 「何? 今大事な話してるんだけど」 「勅使の方が御見えです!!」 勅使とは帝の意思を伝える使者の事だが、ここは南漢だ。 帝を名乗っている袁術の使いだろう。 孫策は苛立つ様子を隠すことなく舌打ちをすると、力が抜けたように息を吐く。 「ここまでか……。 時間切れね。冥琳」 「そのようだな。 全く、我が主と妹君方は我が強くて困る」 「……苦労かけるわ」 最後に、周瑜にのみ聞こえるよう囁くと、孫策は報せに来た兵士に勅使の下へと案内させた。
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