政略結婚と、張任の思い出。

12/27
前へ
/223ページ
次へ
◆◆◆ 10年前、それはまだ黄巾賊が世に蔓延り、暴虐の限りを尽くしていた時の事だ。 ここ、益州も例に漏れず黄巾賊が村を襲い、その被害は計り知れない程だった。 そんな中、益州のある村で一人の少女が立ち上がった。 水干と呼ばれる狩衣を着て、身の丈程もある大薙刀を背負う。 少女の名は、張仁。 字はなく、真名は茜。 先日旗揚げした義勇軍のリーダーで、各地を転戦していた。 そんな中、官軍と黄巾賊が戦っていると聞き、急いで戦場に向かった。 戦況は火を見るより明らか。 旗色は圧倒的に黄巾賊が勝っていた。 こうしてはいられないと、張仁は直ぐ様命令をだし、黄巾賊の中腹に突撃した。 突然の奇襲に黄巾賊は混乱し、隊の収拾に手を焼いていた賊のリーダーを張仁が討ち取ると、黄巾賊は蜘蛛の子を散らす様に逃げていった。 これに喜んだ官軍の将軍は、直ぐに部下を使って張仁を呼び寄せた。 勿論、官軍の部隊を指揮する将軍は自軍を助けた軍のリーダーに礼と褒美をとらせる為に張仁を呼ばせたのだが、ここに1つ思い違いがあった。 この将軍は張仁達を同じ官軍だと思っていたのだ。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2459人が本棚に入れています
本棚に追加