政略結婚と、張任の思い出。

13/27
前へ
/223ページ
次へ
「義勇軍……だと? それでは貴様らは無位無官の民兵ということだな?」 「はい」 張仁の返事に、その将軍は肩を震わせると、張仁を呼んだ兵士の胸ぐらを掴み上げ、殴り飛ばす。 「馬鹿者が!! 貴様のせいで下げなくていい頭を下げる所だったではないかっ!!」 張仁は目の前で起きている光景に愕然とした。 将軍と呼ばれた男は今も殴り飛ばした兵士を、荒い息を出しながら踏み潰す等の暴行を加えている。 そして、張仁の視線に気づいたのか、張仁を見ると兵士を踏みつけながら、吐き捨てる様に言ったのだ。 「民草の女郎風情がっ!いつまでも!儂の天幕に!居座るんじゃない!」 頭の回転が速い張仁は、直ぐに将軍が激怒した理由が分かった。 体面である。 元は、流民飢民の烏合の衆である黄巾賊に破れそうになった所、それを助けたのは同じく元は民の民兵。 将軍は朝廷内で笑い者だろう。 それを思うとむしゃくしゃして、兵士に八つ当たりをした。 そんな所であろう。 兵士には可哀想だが、自分ではどうする事も出来ないと、張仁は一礼して天幕を出た。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2459人が本棚に入れています
本棚に追加