2459人が本棚に入れています
本棚に追加
「民兵……義勇軍か」
男が話しかけて来た。
いや、話しかけたと言うよりは、独り言に近い響きだった。
張仁も独り言だと思いはしたが、彼らを知るために歩み寄る必要もあるだろうと、その独り言に応えた。
「いかにも、某達は義勇軍だ。
貴殿らもそうお見受けするが?」
「ん?まぁ、そんなとこだな」
はっきりとしない返事だ。
あえてぼやかしているとも言える。
男が視線を下に下ろす。
視線の先は峡道だ。
峡道からは怒号と喧騒。
銅鑼の音。
張仁をここまで導いた戦の音だ。
張仁はハッとすると、男とその率いる軍との図った間合いも忘れ、単身、馬を走らせ軍を掻い潜り、崖沿いに寄ると下を見る。
「……ッこれは」
戦だと思った。
黄巾賊と何者かが戦っているのだと。
そう思った。
助太刀をせねばと。
そう思った。
しかし、違った。
虐殺だ。
圧倒的に一方が強すぎて拮抗すら見せない。
その上、戦っている者達も黄巾賊では無かった。
官軍と民兵。
それも、あの官軍を率いている者には見覚えがあった。
以前、張仁達が助けたあの将軍だ。
最初のコメントを投稿しよう!