政略結婚と、張任の思い出。

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「民兵……義勇軍か」 男が話しかけて来た。 いや、話しかけたと言うよりは、独り言に近い響きだった。 張仁も独り言だと思いはしたが、彼らを知るために歩み寄る必要もあるだろうと、その独り言に応えた。 「いかにも、某達は義勇軍だ。 貴殿らもそうお見受けするが?」 「ん?まぁ、そんなとこだな」 はっきりとしない返事だ。 あえてぼやかしているとも言える。 男が視線を下に下ろす。 視線の先は峡道だ。 峡道からは怒号と喧騒。 銅鑼の音。 張仁をここまで導いた戦の音だ。 張仁はハッとすると、男とその率いる軍との図った間合いも忘れ、単身、馬を走らせ軍を掻い潜り、崖沿いに寄ると下を見る。 「……ッこれは」 戦だと思った。 黄巾賊と何者かが戦っているのだと。 そう思った。 助太刀をせねばと。 そう思った。 しかし、違った。 虐殺だ。 圧倒的に一方が強すぎて拮抗すら見せない。 その上、戦っている者達も黄巾賊では無かった。 官軍と民兵。 それも、あの官軍を率いている者には見覚えがあった。 以前、張仁達が助けたあの将軍だ。
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