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張仁は歯を食い縛り、唸るように黒田に問い質す。
「某は以前から貴殿に聞きたい事があった」
「ほう?
俺の名も随分と知れ渡ったな」
黒田はそんなことを嘯きながらも眼下を見下ろす。
その表情は冷やかだ。
いや、能面のようだと言った方がらしい。
張仁は黒田をつぶさに観察しながら話すことにより、冷静さを保たせる。
でなければ、既に戦場の空気に呑まれて、黒田に掴み掛かっていただろう。
「貴殿は何をしたいのだ?
何故、官軍と戦っている。
賊を討つ為に立ち上がったのではないのか?」
崖したでは助けてくれと泣き叫ぶ官軍の兵士が殺されていく。
それを見ながら黒田は問い返す。
いや、もしかしたらこれもただの独り言だったのかもしれない。
ただ、確かに黒田は張仁の問いかけに反応した。
「賊の定義とは何だろうな」
そして、続ける。
「お前の名は?」
「張仁だ」
「そうか、じゃあ張仁。
賊を討つ為にと言うが、賊とは何を指すんだ?」
「無論、黄巾賊だ。
そして、世を乱す輩は皆、賊だ」
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