黒田、将を欲する。

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草ぶきの屋根。木目の門。 山中にしては広い屋敷の前に立ち呼び掛ける。 「ごめん。どなたか居られるか?」 少しして門が開く。 「はいよ。どちらさんだい?」 出てきたのは5、6才程の少女。 「黒田熊熊という旅の者です。 後ろの者達は私の従者。 今晩泊めて頂きたいのだが家の者はご在宅か?」 「いるよ。聞いて来るから待ってて」 そう言うとさっさと中に入ってしまった少女を見送り、息を吐く。 「留守じゃなくて良かった」 「そうですね。でも、私としては兄貴の言葉使いの方が丁寧で意外でした」 「そうか?泊めてもらう立場としては当たり前だろ?」 「相手が年端も行かない子供でもですか?」 「…………………?」 「止めときなさい、梔子。 とのは全く質問の意味が分かってないわ」 何かバカにされた気がするが、少女が出てきたので言い返すのは止めよう。 決して、田豊に口論で勝てないからではない。 「黒田さん、先生の所に案内するから連れの方と一緒についてきて」 「ん?先生とは?」 「オイラのお師匠さんさ。 水鏡先生ってんだ」 少女はそういって誇らしげに笑った。
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