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しかし彼女は気づいてはくれなくて、無性に自分のした事が恥ずかしくなり、すぐさま屋上へ走った。
左手に巻いていた包帯を急いで取り、風に流した。
包帯はまるで生きているみたいで、空へ飛んでいく姿をしばし眺めていた。
「やっぱり嘘はいけない。」
俺は何事もなかったかのように教室へ戻った。
結局その後も彼女とは話しはできず、その年の夏休みに彼女は福島に転校してしまった。
「嘘をついて、本音を隠して、卑怯だな俺…」
この思いを書けるのは今しかないと思い、俺は机に向かった。
俺たちのバンドにとって初めてできた歌は失恋の歌だった。
いつかまた本物の恋をしたその時に、左手に包帯を巻いていたら、あの頃の俺に俺は笑ってしまうだろう。
end.
原作:木村太佑
『鳶と孔雀』アナザーストーリー『ヒダリテホウタイ』。
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