鳶と孔雀スピンオフ小説02『ヒダリテホウタイ』

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しかし彼女は気づいてはくれなくて、無性に自分のした事が恥ずかしくなり、すぐさま屋上へ走った。 左手に巻いていた包帯を急いで取り、風に流した。 包帯はまるで生きているみたいで、空へ飛んでいく姿をしばし眺めていた。 「やっぱり嘘はいけない。」 俺は何事もなかったかのように教室へ戻った。 結局その後も彼女とは話しはできず、その年の夏休みに彼女は福島に転校してしまった。 「嘘をついて、本音を隠して、卑怯だな俺…」 この思いを書けるのは今しかないと思い、俺は机に向かった。 俺たちのバンドにとって初めてできた歌は失恋の歌だった。 いつかまた本物の恋をしたその時に、左手に包帯を巻いていたら、あの頃の俺に俺は笑ってしまうだろう。 end. 原作:木村太佑 『鳶と孔雀』アナザーストーリー『ヒダリテホウタイ』。
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