君が、いない

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(具合でも悪いのか…?) パタン、と冷蔵庫を閉じ、顎に手を当てて考える。 冷蔵庫の中身が無い状態で買い出しに行かない等、律儀な途綺には有り得ない事。 ならば、買い出しに行けない状況にあるのかもしれない。 「………見てみるか」 具合が悪いなら看病してやらなくては。 軽は自分の部屋の隣にある途綺の部屋に向かった。 コンコン、とドアノックをして、途綺に呼び掛ける。 「途綺ー、起きてるかー?」 昨日同様返事はない。 軽は再度首を傾げると閉ざされた扉を開けた。 そして、広がる光景に目を見開いた。 「―――――え…」 そこに居ると思っていた途綺の姿は何処にも無かった。 「な…んだよ、これ」 ベッドや本棚等の家具はある。 にも関わらず、この妙な胸騒ぎは一体、何だ。 「…っ、途綺」 途綺の部屋を出て、家中を探し回る。 自分の部屋、トイレ、風呂場、最後にリビング。 リビングに置かれた机の上。 ポツン、と置かれたシルバーリングと合い鍵を見て、目の前が真っ白になった。
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