君が、いない

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何も言わずとも傍に居ると思っていた。 どんな事をしても離れていかないと信じていた。 それなのに、今この状況は一体何だ? 今、何が起きている? 目の前が真っ白になった軽の脳裏に浮かんだのは"別れ"の二文字。 「嫌、だ、そんなの、途綺、嫌だ…っ!!」 途綺の物だったシルバーリングを両手に包み、軽はその場に踞る。 「と、き…途綺…、嫌だ、俺は…途綺…!!」 ひゅう、と喉から空気が漏れ、瞳からは止めどなく涙が流れ落ちる。 途綺、途綺… お前は今、何処に居る? どんな気持ちで、此処を出て行った? お前は俺の事が嫌いになったのか? 涙ながらに紡いだ言葉は静かに部屋に溶けていって。 君が、いない。 それだけで、この部屋は空っぽになってしまった。 「嫌だ、途綺ぃ…っ!!」 きっと俺が悪い。 俺が悪かったんだ。 頼むから、お願いだから、 戻って来てくれ、笑ってくれ。 もう一度だけ、俺の名前を呼んでくれ。 心から漏れた悲痛な軽の叫びは降り頻る雨の音に掻き消された。
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