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「…で、何があった?」
風呂と服を貸してもらい、ソファーに座る途綺にココア入りのマグカップを渡しながら、友斗はそう切り出した。
途綺はココアを一口啜る。
口内に広がる独特の甘さに目を閉じる。
「…軽の事か?」
「…っ!」
軽。
その単語が友斗の口から出た瞬間、途綺の体が強張る。
ちらり、と横目で友斗を見れば、友斗は途綺を見つめたまま、途綺が話し出すのを待っていて。
友斗に隠し事は出来ない。
そう理解すると途綺は小さく溜息を吐く。
「…あのね、」
途綺の口から淡々と今まであった事全てが語られる。
その内容を聞けば聞く程、穏やかだった友斗の顔が段々と強張る。
「…そうだったのか」
ハァ、と友斗は重い溜息を吐く。
途綺と軽の関係も、軽の浮気性も友斗は知っていた。
けれど、途綺が此処まで思い詰めていたとは知らなかった。
黙り込む途綺を見つめて、友斗は、
「…なあ、途綺? お前さえ良ければ…此処に住むか?」
と聞いた。
突然な友斗の申し出に途綺は目を見開いて、友斗を見上げた。
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