入学式。

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入学式。

 私は、誰も居ない教室で、既に決まっている席で。興味も感慨もなにもない、適当な小説の頁を捲っていた。  ―――2度目の、1年生。  夏休みの時に、交通事故に遭った。植物状態が数ヶ月続いた為、当然、単位などもらえるはずもなく。やむを得ず、もう1年同じ学年を繰り返す事になった。  私は少しだけ、自嘲気味に笑って、小説を閉じた。どこまで読んだ、とか、そういうのは知らない。そもそも、内容なんか頭に入ってないし。  いっそ、寝てしまおうか。そう思って、私は閉じた小説を、教室の後ろの鞄に入れようと立ち上がった。
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