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「あれ、あんた、入学式は?」
身体が固まった。それは瞬間の事で、すぐに視線は、教室の入口へ向かった。
まばゆいばかりの金髪が、とても高い位置で結ばれ、もっさりと垂れていて。長い睫毛はバサバサと揺れ。たくさんの大きなピアスが、シャリンと音を立てて。
とても、入学式に来た学生とは思えない容姿の彼女は、私が質問に答える前に、一番近い席に座った。すぐに携帯を取り出して、長い爪でカチカチといじりはじめる。
「あ、あの」
「あ、そだ。あんた、入学式行かないの?」
今答えようとしたのに。私は少しだけイラッとしたけど、それを表には出さずに、携帯を見つめる彼女に答えた。
「私に出席の義務はないの。あなたは、どうして参加してないの?」
「だってさ、どうせ校長だかなんだかの、よくわかんない話でしょ?行く意味ねえし。」
ケタケタ笑いながら、彼女は平然と答えた。私はそれに唖然として、開いた口が塞がらなかった。ホントに塞がらないもんなんだな、なんて考えながら。
―――今思えば、この頃から私は、彼女に惹かれていたのかもしれない。
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