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などと、全く悪びれた様子もなく、アントニアは満面の笑みでおどけてみせる。
「あぁ、アントニア様?何とひどい仕打ちでございましょう…」
次の瞬間、嘆くブランディス伯爵夫人を余所に、アントニアは浴槽から飛び出して全裸で走り始めたのである。
「さぁ、わたくしを捕まえる事が出来たのなら、部屋に戻ってもよろしくてよ」
汚れなきほほえみと白く透き通る肌が、アントニアの姿をまるで天使のように錯覚させる。ブランディス伯爵夫人は、その姿に一瞬目を奪われたが、すぐ様ハッとなり我に返った。
「まぁ!何とはしたない…」
一糸もまとわぬ姿のまま、アントニアは浴室の中を無邪気に駆け回る。これには、侍女達も驚くばかりであった。
「ア、アントニア様を早く捕まえるのです!」
ブランディス伯爵夫人の掛け声で、侍女達とアントニアの鬼ごっこが始まる。全員でアントニアを捕まえようと躍起になるが、子供特有のすばしっこさの為か捕まえられない。
濡れたままの煌めくブロンドを振り乱し、アントニアは自分を捕まえようとする侍女達の手をスルスルとかいくぐる。
いいようにアントニアに振り回され、もはや浴室は収拾が付かない程の大騒ぎとなった。
「ふふ…皆、わたくしを捕まえる事が出来ませんでしたね」
得意気なアントニア、ブランディス伯爵夫人達を巻き込んだ盛大な鬼ごっこも、ようやく終了の時を迎えた。
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