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どうやらカロリーナも、その事には薄々感付いているようだ。
「全く…いい加減になさい!アントニア」
「あぁ~ん、お姉様…アントニアはそのような悪い子では御座いませんわぁ…」
甘えた口調で姉にすがるアントニア、こうした甘え上手な面は彼女の面目躍如と言ったところであろうか。
「もう、本当にしようのない妹なのだから…」
結局、ブランディス伯爵夫人のこの日の授業は、アントニア当初の目論見通り有耶無耶の内に中止となった。
そして、季節は移ろい秋を迎える──
この日、アントニアは狩猟服に身を包み、家族総出の狩りを楽しんでいた。
狩猟に限らず、年中行事の数々を家族揃って行うブルボン王家、こうして家族の和を重んじ、大切に育んでいるのだ。
「あぁ、カロリーナ姉様、あそこにキツネが、キツネがいます」
興奮気味のアントニア、彼女にとって見るもの全てが好奇の対象なのであろう。野生の生き物を見掛ける度、カロリーナの袖を掴んでは驚いてみせる。
「ははは…そんなにキツネが珍しいかね?アントニア」
「はい、お父様!」
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