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アントニアの下には、四月十六日にメダイヨに納められた形で、フランス大使からオーギュストの肖像画が届けられた。肌身離さず肖像画を身に付けていて欲しいと言うフランス側の配慮である。
「こんな小さな肖像画では、お相手の顔もよく分かりませんわ…」
大使が去った後、アントニアは一人、自室でつぶやいてみせる。
対してフランスでも、五月十六日の起床の義において、アントニアの肖像画がルイ15世により一族にお披露目された。
「どうじゃオーギュスト、中々に可愛らしい姫君ではないか」
ルイ15世から言葉を掛けられ、オーギュストは少々困惑した表情を浮かべてみせる。
「全く、其方の妃となる姫君ぞ。もっと喜ばんか…」
「はぁ…」
どうやら、オーギュスト自身もまだピンと来ていないようだ。
アントニアとオーギュスト、二人はまだ見ぬ互いの婚約者へと思いを馳せて行く。
翌月、六月七日にテレジアの下へルイ15世から正式な婚約に関する書簡が届いた。
いよいよ、婚礼の儀式は間近である──
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