≪囚人第二八○号≫

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 儚く笑う女囚の目から、さらに大粒の涙が一筋こぼれた。最後の晩餐であるスープを一口、二口と口に運ぶ。全てが終わり、全てを失った彼女にとって、最高の持て成しだったに違いない。   程なくして、死刑執行人のシャルル=アンリ=サンソンが女囚を革命広場まで連行し、そこで彼女はギロチン刑に処された。  その最後の時まで、美しく高貴であろうとしたフランス王妃マリー=アントワネット最期の姿であった──  
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