0人が本棚に入れています
本棚に追加
……ガタタンっ
電車がゆれて、私は眠りから覚めた。
窓の桟に腕をかけ、頬杖をついて、陽平が笑いかけた。
「葉月、眠りながらニヤニヤしてたぞ」
「もう。やだな。正面からじっくり見ないでよ」
答えて、ふっと夢の中でカブトムシを捕っては得意げにしていた男の子を思い出す。
明るい性格をそのまま表した目は歳をとっても変わらない。
「夢……見てたの。ほら、最後に3人で遊んだ時の」
約束、したのに。
私たちは結局次の夏に会うことができなかった。
時を経て、そう、10年たって、ようやくまたあの場所へ向かっていた。
最初のコメントを投稿しよう!