そして10年後

4/5
前へ
/14ページ
次へ
「葉月、眠そうだな。無理…してねーか?」 「んー。大丈夫。夏休み中の宿題とか、片づけようと思って昨日の夜、夜更かししただけだから」 「夏休みの宿題て。夏休み始まったの、昨日からだろが」 陽平のあきれた声に私は頬をふくらます。 「いやっ、だって、おばあちゃんとこ着いたら、勉強なんかしている暇ないもん!ほら、アオイちゃん、探さないといけないし!」 アオイちゃんの名前を聞いて、陽平はじゃっかん眉を寄せる。 「またそれか、葉月。お前、それが本当の目的じゃないだろ、今回のばーちゃんちは」 「それは……そうだけど」 窓の外を見やる。 ちょっと眠った間に、すっかり景色は田園風景。 「でもやっと行く機会ができたもの。会いたいじゃない」 「気持ちはわかるけどな。もー何年も前だぞ。あいつ、絶対地元の奴じゃないっぽい空気ばんばんかもしてたじゃねーか」 あの白い肌を思い出す。 「確かに。陽平のほうが、よっぽど田舎ボーイ」 …と、デコピンがおでこに炸裂する。 おでこを抑えてにらむと、陽平は「かかかっ」と笑った。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加