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「陽平は」
あん?と、顔を上げる。
「陽平はいいの?夏休み、ずっと付き合ってくれるの?」
「おう。そのつもりできた。」
虫かごいっぱいにカブトムシを捕まえていた陽平を思い出す。
やんちゃで、人なつっこくて、そう、犬のような男の子。
昔と全然かわらず背だけ伸びた、という感じ。
「…なんだよ、来ちゃダメだったのか?」
低い声に、慌てる。
「いやいやいやいや。わたくし事に、非常に申し訳ないです」
ぶんぶんと頭を振ると、その頭をゆるく捕まれた。
「葉月、無茶すんな!俺はお前が心配で着いてきたんだから!お前の原因不明の奇病の…」
「洋介…やめて、奇病と言わないで」
ちょうど。
電車がホームに到着した。
バッグを抱えて、我先に飛び出す。
「さー!到着した!張り切って、アオイちゃんを探しに…」
「いや。病院に行くのが先だろ」
鞄を肩からはずされ、前に立たれる。
振り返って、有無を言わさぬ雰囲気で彼は言う。
「な、葉月?」
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