そして10年後

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「陽平は」 あん?と、顔を上げる。 「陽平はいいの?夏休み、ずっと付き合ってくれるの?」 「おう。そのつもりできた。」 虫かごいっぱいにカブトムシを捕まえていた陽平を思い出す。 やんちゃで、人なつっこくて、そう、犬のような男の子。 昔と全然かわらず背だけ伸びた、という感じ。 「…なんだよ、来ちゃダメだったのか?」 低い声に、慌てる。 「いやいやいやいや。わたくし事に、非常に申し訳ないです」 ぶんぶんと頭を振ると、その頭をゆるく捕まれた。 「葉月、無茶すんな!俺はお前が心配で着いてきたんだから!お前の原因不明の奇病の…」 「洋介…やめて、奇病と言わないで」 ちょうど。 電車がホームに到着した。 バッグを抱えて、我先に飛び出す。 「さー!到着した!張り切って、アオイちゃんを探しに…」 「いや。病院に行くのが先だろ」 鞄を肩からはずされ、前に立たれる。 振り返って、有無を言わさぬ雰囲気で彼は言う。 「な、葉月?」
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