第零章

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「フ……あの『デサイダ(神殺し)』の力あっての交渉成立だったな……。しかし、教皇猊下が……。それは悪い事をした。わざわざ、わらわのような者のもとに赴いて下さる気であったとは」 「キミ達は神々との和平交渉成立の立役者。そしてその後のユースフロウ大陸統一を成し遂げ、今の平和な『アヴァロン皇国』を築いた、言わば人類の救世主ですからね。  それだけ凄いことをやってのけたのですから、当たり前でしょう。オズワルド君の時も国葬で、全国民が自発的に、なんと三年も喪に服しましたしね」  ゼルタは白くなった髭を弄びながら、遠くに視線を移した。 「オズワルドには派手にしてくれるなと念を押されたが……。城の者は誰も指示しておらぬのに、勝手に国民がやり始めたのだから、あれはやむを得なかった。あの時は嬉しくて涙が止まらなかったの……」 「だから知りませんと言ったのです。キミの時も、きっと同じ事をされますよ」  ゼルタは女王陛下に視線を戻すと、ニッコリと微笑んだ。 「そうだろうか? わらわにそんな資格があるだろうか……?」 「それは国民や周りの人々が決めることです。なに、心配しなくても、そうならなかった時は、私がひっそりと弔って差し上げますよ」  ゼルタはそう言って、いたずらっぽくウィンクして見せた。
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