第零章

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 オズワルドとアイリーンは、天界との和平交渉をまとめ、地上の戦乱をエルンスト教皇の名の下に鎮めると、全国民に英雄として崇められ、ユースフロウ統一国家『アヴァロン皇国』の初代国王に任じられた。  教皇を最高権力者とし、実際の国政は軍事力を持つ国王が行う『皇国制』は、大変国民への受けが良く、発足から六十年、現在の平和を築くことに成功している。 「エルンスト教皇を頂点とする国に、なぜアヴァロンの名を冠するのか?」  オズワルドはそう言って、この国名には断固反対していた。基本的にでしゃばるのを好まないオズワルドには、国名に自分の名が使われるなど、耐え難い事だったのだろう。  しかし、それはエルンスト教皇猊下の一声でとりなされた。 「国王は力。教会は心。二つが一つとなって国を治めている事を示すには、最上の名ではありませんか」  その一言に、オズワルドは沈黙したのだった。  そしてオズワルドとアイリーンは、皇国発足時に不老不死を始めとする『力』を、全て『古の大魔女マーリン』へと返還し、それからは普通の人間として生きてきたのだ。  その後、マーリンの姿を見た者はいない。  彼女はまた、伝説となるのだろう。  オズワルドは五年前、アイリーンに看取られて、その生涯を終えた。安らかな笑顔を浮かべながら……。
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