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「だって、行く気もない場所を熱心に調べるってのは余り気が向かなくない?」
「はいはい、自慢はいいから。分かったよ。当日、お前の家に行ってやるから」
「ふふふ、この会話だけ聞くと私たちは恋人みたいだよー」
意表を付いた三咲の発言に俺は咳込んだ。
「馬鹿言え、絶対にないだろ」
「分からないよー?案外、他の時間軸で私たちがイチャイチャしてるかも知れないよー」
「はいはい」
コイツの意味の分からない発言にはもう慣れた。そんな言葉にいちいち反応してたらこっちが疲れるだけだ。
だから、こういう場合は流すに限る。
「まぁ、喩えだよー。それより、今此処に居る拓海も実は私の色気によってもう虜になっているかもよー?」
「はいはい、夢を語らない」
「むぅー。いつか愛してる、って言っても拒否ってやる」
「どうぞどうぞ」
三咲のそんな言葉に俺はおどけて見せる。今の所、そんな予定は微塵もない。
「覚えとけよー。さてさて、私はそろそろ塾に行かないと。拓海よ、寂しいのは分かるが止めないでくれ」
「止めねーよ。ほら、行くなら行け」
三咲に対してシッシッと手を払う。
「むっ、拓海はツンデレだなー」
「どっから出てきたその言葉」
「はははっ、じゃ、また明日!」
そう言い教室から走って出て行く。残ったのは勿論俺だけ。多少、寂しいなんて思っちゃいない。
しかし、
「三咲と恋人か――」
ふと、思い出したように口に出してみる。今、思うと考えたことさえなかった。
三咲と恋仲になるなんて、今の俺たちでは考えられない。
確かに俺と三咲は仲がいい、俺たちを知らない奴らが見れば恋仲と答える奴もいるかもしれない。
でも、今までの三咲との関係は変わらない。今も――そしてこれからも。
何か大きな変化がないと揺るがない、俺たちの間には『何か』そういう概念がある。これは多分、三咲も感じてると思う。
アイツとの関係を言うなら――
「――親友かな」
『はぁ、』と、ため息を付き、ふと机を見る。そこには三咲が書いた願書があった。
長ったらしい文章の中に一つだけ、ふと目に止まった内容がある。
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