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「いつ見ても、創立50年には見えない綺麗さだよな」
これから通う自分の高校を見上げ、シミジミとそう感想を述べた。立て替えた訳でもないのに、校舎は外装、内装共にとても年期を感じさせない。
確かに私立という点もあるが――うん、他とは比べものにはならないな。
三咲と話していた高校に俺は見事に受かった。うん、よかった。
――もし、もしだ。落ちていたら、俺はどうなっていたか分からない。もしかしたら、どっかに死体として打ち上げられていたかもしれない。
まぁ、他の人より受かりやすかった理由はあるのだが、何より合格通知が来た時は安心した。
何はともあれ、今日から俺の高校生活が幕を開けるのだ。
「よし、クラスを見に行くか」
時間より早く来たのだが、クラス表の下にはビッシリと人がいた。
「多いなー。まぁ、大丈夫かな」
人の中に入り押し退けていき、俺はクラス表を確認した。
クラスは『1―3』
確認を済ませてクラスに向かう。席の表を見ると俺はどうやら一番前の左端だった。名字が安藤だから仕方がないのはもう分かっている。
入学式までの時間が迫る。チャイムが鳴り、先生が入ってきた。身形が整った二十代ぐらいの若い男の人だった。
「初めまして、私の名前は横井 澄(ヨコイ トモ)だ。早速だが全員揃ってるな?よし、体育館に移動するぞー。自己紹介は入学式の後だ」
横井先生の指示でクラスメートは廊下に出て、体育館に向かう。
体育館には今年入学した300名が整列している。
集まった生徒が静かになった頃を見計らい校長が壇上に上がり、お辞儀をする。それに合わせ、生徒たち全員が頭をさげ――長い長い話が始まった。
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