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会場は、ざわつきが収まらない。
そらそーだ。普通、新入生代表の挨拶で『高校に来る理由が大体はない』ましてや、『誰かの作った部活に入りたい』とか、言わないだろ。
さらに此処に居る大体の生徒は『安藤拓海』という人物を知らない。さっきから数人のクラスの奴は、名前をもう覚えてるのか知らんがチラチラと俺を見てくるがな。
嗚呼、波乱の幕開けだ。
三咲の登場により一日目から当初予定していた俺の高校生活と環境は著しく変化してしまったことは目に見えている。
そんな、元凶は三咲四季は『言い切った』 っと満足気な表情で壇上を降りていく。
「えーっと、三咲さんに拍手……を」
校長の発言により、生徒たちは壇上を降りる三咲に拍手を送る。
それに対して三咲は笑顔で手なんか振ってやがる。アイツ、そんな拍手されるよーな話してないよな!?
世の中、場に流される時が多すぎだな。
「それではこれで入学式を終わります。全校生徒、礼!」
体育館が静まった頃合いを見てか、そんな声で入学式が終わった。
波乱な入学式は確かに終わったが、俺としては全然終わっていない。
――――――――――
「なぁ、お前、安藤拓海……だったよな?」
退場して行く際にやはり、列の前後生徒からその声が出てきた。その一言が引き金になったのか他のクラスメイトも言い寄ってきた。
「あぁ、確かにそうだけど。前で言ってたのは別の同姓同盟の奴だ」
「え、そうなのか?」
「うん、俺はアイツを知らないからね」
この場所を逃れる為には仕方がない嘘だった。俺はあまり嘘は付きたくないが、高校の初っ端と天秤をかけたら、必要な嘘も在ると思える。
そうだ、仕方がない。今はアイツを知らぬ、存ぜぬを貫く。例え、親友だとしても!
俺の嘘により、周りのクラスメイトも納得したのかその話題は収集を見せかけていた。
しかし、現実とは非情なモノだった。
「あ、拓海だ!どーだった?私の華麗なちょー凄い挨拶はー」
あろうことか、向こうからお出でなさったのだ。そこで全ての嘘が一瞬にして、バレた。
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