二つ名

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臼井に至っては、三島の回答内容と根拠からしてわかっていない。 「臼井君の回答としては、指揮官を先に狙った点で30点。三島君の回答は指揮官の一撃目を行動不能に留めた時点で70点。狙撃手としては70点で及第点かな」 臼井は射殺できるタイミングで行動不能にした事で点数が上となる事がわかっていない。 「臼井君、行動不能にしたのは、敵に撤退させないためだよ」 そう言うと、臼井にもようやく理解できた。 「熟練度の高目の支援者を無傷で残し、指揮官が死亡すれば、支援者指示で撤退が早期に決断される。その為に、容易に撤退という選択肢を選ばせない行動不能という手段に高得点を与えた訳だ」 そう言うと、三島を見た。 異論はなさそうだが、残りの30点がわからないようだ。 「200mまで待ったのは、行動不能とする正確な狙撃距離を待つ為かな。実は、この質問の状況は数日前にあった実際の状況だ」 そう言うと、臼井・三島の顔がギョッとした。 そして、香澄は心配そうな顔をこちらに見せる。 大丈夫だとハンドサインを送るが、香澄は聞き入れない。 「石井少尉なら何点をつけると言いましたが、少尉はどうしたのですか?」 三島は既に我慢の限界を超えていた。 いくら考えても30点の差が判らない。その状況が思考の限界を超えさせた。
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