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香澄が話をそらそうとする気配に私は手で制し、答えを話す。
「三島君の答えに足りないものは、夕方という点だ。指揮官行動不能の後、こう着状態になる。その対策がどこにもない。
夜になれば、月齢2日の闇夜に紛れて指揮官を回収し撤退されてしまう」
そう言うと、三島は黙るしかない。
三島にも判ったのだ。こう着状態を打開する手段が思いつかない事に。
「そう。こう着状態を打開する手段には、感情制御が必要だった」
そう言うと、三島がこちらを見る。
訳がわからないという表情だ。
臼井も同じだ。
香澄は相変わらず心配そうな顔をしている。
「浅井少尉、大丈夫だ。心配は要らない」
そう前置きし、真実を話す。
「片瀬中尉も知らない内容だが、私の取った行動を話す。
350m先で発見した3人を観察。先程説明した熟練度を確認し、プランを検討。
その時点で330mまで接近されていたので、指揮官の右膝を狙撃し、行動不能にすると同時に的確な指示を出せない状況を作る。
この場合は指揮官放置即時撤退指示かな」
ここで、三島の顔が変わる。
行動不能の意図は伝えたが、指揮官の的確な指示の妨害までは考慮に入っていなかった為だ。
「その直後には、斥候をポイントする。経験の浅い兵はこの時点で、とっさに身を隠さず救出を選択しやすい為だ。
その斥候も同じ行動を取った。
支援者の指示で物陰に戻ろうとしたが、その時点で斥候を射殺。
支援者は物陰から出てこないので、こう着状態になった」
ここまでは、三島の行動と大きな違いはない。
「こう着状態を打開する方法として、私の行動としては…」
そこで一度深呼吸をする。
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