戦場の方程式

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…あれから2年か… その時はあたしと朧の所属はまだ第181小隊ではなく、第127小隊だった。 その時の小隊長は岩沼少尉だった。 …岩沼はアホの極みだったなぁ… …あんな作戦しか思いつかず、そして誤った指示を強制して… …部下の意見を一切聞き入れない奴だったな… 司令部からの指令は要塞攻略。 召集された部隊規模は1個大隊で、内訳は第12中隊、第18中隊、第19中隊だった。 戦闘開始から20日経過しても状況は変わらず要塞は鉄壁の防御を誇った。 中隊長級会議で、立木大隊長の分析結果として、要塞守備隊長の柿沼の人望が厚く結束が固くなっており、この攻略が鍵とした。 そこに、野心家の岩沼少尉(第127小隊長)と結託した菅井大尉(第12中隊長)が、秘策があるので3日くれと大見得を切った。 会議の前に菅井大尉の状況分析は既に立木大隊長と同じ結果を出していた。 そして、岩沼少尉に策を練らせていた。 …野心家+野心家=クズ…だったなぁ… 岩沼はあたしと朧を呼び出して、作戦を告げた。 その作戦は、いまだかつて無い愚策だった。 「君達には、要塞守備隊長の柿沼の周囲2mに近づく者を全て射殺してもらう」 …あたし、耳を疑ったよ… そう、鍵を握る男である柿沼を生かしたまま、近づく者のみ容赦なく殺せというもの。 そして、射殺対象は軍人に限定などはしていない。 「一般人は当然対象外ですよね」 あたしは当然そうだと思っていた。 横にいた朧も「何を当然な事を」と顔に書いてあった。 だからこそ軽口も叩けた。冗談も。 が、予想は裏切る為にあると岩沼は証明した。 「一般人も含む。この作戦には敵に恐怖を与えることに意味がある。これは命令だ。従ってもらう」 …野心家×命令=不条理…か…
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