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…今にして思えば、この時点で走って立木大隊長に直訴すべきだったな…
そして、作戦は命令と同時に実行された。
説明直後から、岩沼とあたしと朧の3人で要塞が一望できる岩場へ移動させられ、狙撃の準備にかかった。
朧はライフルを取り出し、セットする。
しかし、取り出したVT-10は岩沼によって片付けられ、別のライフルを渡された。
…ZM-200…?
無論、あたしも朧も、その銃は知っている。
朧が使用したことがあるのも知っている。
そして、それを人に使った場合の結果も予想は付く。
なので当然ながら、朧も抗議する。
「…岩沼少尉?対象は人間のはずですが…?」
ZM-200、それは狙撃用ライフル銃の分類では正しくない。
対物マテリアルライフルというのが正しい。
国際条約の交戦規定では、人を撃つ際に関しても禁忌と呼べるものを規制するものがある。
ソフトポイント弾(着弾時に弾頭が変形し張り付く形になり、より破壊力を強めた弾頭)
ダムダム弾(着弾時に弾頭が崩れ、体内に分散、破壊の限りを尽くす弾頭)等、撃たれた人間の最低限の尊厳を守るために使用を禁止されている弾頭もある。
ただ、この対物マテリアルライフルは、必要以上に威力が強すぎる為、銃自体の使用を禁止されるという、理由のわかりやすい銃だ。
しかし、現物があるには理由もあり、名前にもある通りこの銃は本来は人を撃つ物ではない。
装甲車を破壊することを目的とした銃という、条約の抜け道を通り作られた物だ。
「この作戦の目的は求心力の排除を目的としている。ZM-200を使用する」
…嘘でしょ?…
朧も同じ表情を浮かべている。
「こんな物で人を撃ったりしたら、体の半分は吹き飛びますよ?」
朧の意見ももっともだ。あたしもそう思う。
「その威力が今は必要なんだ。」
そう言い捨てた岩沼は腰の銃に手を掛ける。
その動作が、既にもう議論の余地が無い事を語っていた。
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