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軍警察の証言により、射殺が岩沼による命令と脅迫の上での事が明らかとなり、朧は釈放され、岩沼が入れ替わるように拘束された。
そして朧の名誉を思いやった立木大隊長のはからいで、本来表に出ることの無い事実だが、部隊にのみ周知されることになった。
しかし、二つ名は既に他部隊へと広がっていた為、今の状況がある。
…あの糞野郎のせいで朧は…
そんな事を考えていると、ドアのノックが聞こえる。
ベッドから起き上がり、ドアを開けると由宇がいた。
「おつかれさん。どうだい?」
そう言って由宇は手にした缶ビールを差し出す。
「ありがと。貰うわ」
そう言いながら由宇を部屋に入れる。
官給品のパイプ椅子に由宇は腰掛け、手にした自分のビールを見つめる。
あたしはベッドに腰掛け、貰ったビールを一口煽る。
アルコールが胃を焼き、頭がハッキリする。
どれくらい時間が経っただろうか?長かったような気もする。数分だった気もする。
口を開いたのは由宇だった。
「あれは嫌な作戦だったな。俺は香澄から説明で聞いただけだが。」
由宇も同じ事を思い出していたようだ。
「最悪だったね。野心家+野心家=クズ、野心家×命令=不条理、狂人+武器=狂気、あたしは岩沼と菅井を一生許さない」
そう吐き捨てて、更に一口ビールを煽る。
「糞みたいな内容でも…いくら不条理でも…命令だからな…俺には反面教師として奴らは役に立っている」
そう言った由宇の顔は沈んでいる。
由宇が朧を心配していない訳が無い。
そんな由宇には、あのことをバラすか迷った。
迷ったが、直感に従った。
今まで直感に外れはなかった。
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