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空を見上げボーっとしていると、横からコーヒー缶が差し出される。
「香澄、ありがと」
そう言ってプルタブを開け、一口飲む。
「キャラじゃないねぇ。今からでもあたしと代わる?」
…ははっ。流石。読まれてる…
「知ってるだろ?訓練生の反骨精神の効果は。
香澄も由宇も私もそれで上達した。
それに、恨みを買うのは慣れてるし。裏を読むのは香澄だけじゃない」
そう言って顎をしゃくると、香澄は顔を向けた。
…三島と臼井と…岩沼?…
「さてと、岩沼はもう少し殺気立ってくれないと困るから、私が相手しよう。その間、三島と臼井を頼めるか?」
香澄が頷くのを見て、岩沼へと歩き出した。
香澄は三島と臼井を手招きしている。
「さて、岩沼君。どうしたのかな?」
岩沼の表情はムッとしている。
「わざと……ですね?」
私はマジマジと手足を見る。
「うーん。もうチョイ赤色が欲しいね。あと数発入れときゃよかったか?」
岩沼の顔が赤くなっていく。
「をっ、顔まで赤くなってきた。遊んでる教官としては嬉しい限りだ」
嫌味も交えて挑発する。
「…いつでも…倒せたと?」
自尊心をベコベコにされた相手に抱える感情を一生懸命我慢しているようだ。
天性の天邪鬼はこういった時に鞭として役に立つ。
「…生き残れるタイミングが君にあったかな?
あれだけ無駄弾をばら撒いてあげた私の所在も気付かなかった君に」
岩沼の顔色が更に赤くなる。
…次が駄目押しかな…
「射的の的より狙いやすかったのは事実だけどね。
遊んで欲しけりゃ、もうチョイ腕をあげな。
観測手の腕で狙撃手を使いこなせるようにな」
そう言って、話はここまでとばかりに香澄たちの所へ歩いていった。
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