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臼井は香澄を捕まえ、先程の模擬戦の問題点について質問攻めにしていた。
そんな時に私が戻ってきたものだから、三島からもマシンガン質問が飛んできた。
「なぜ、石井少尉の弾は当たって、私の弾は外れたのですか?」
…腕の差…と言うのは簡単だが、違うんだよなぁ。
「三島君は物理は得意か?」
三島には、質問の意図がわからないが、無駄な話をしない事は、今までの経験から理解している。
「正直苦手です」
三島は素直に答える。
「着弾点を見れば判るが、君はあの時、距離と風速からサイト調整をしていたと思う。外れたのは別の要因だ」
三島は、確かにその2点を考慮してのサイティングをしていた。
「コリオリ力という。物理に詳しければその点に気付くだろう。」
ピンと来ていない三島のためにもう少し噛み砕く必要がありそうだ。
「判りやすく説明すると、地球の自転が関係している。
例えば、君が左に回転する円盤の中心で、私が円盤の端に居たとする。
中心の君から私に直線的に狙って撃つとどうなるかを想像してくれ。
ブレとかは考えなくていい。そうすると、円盤の回転速度が速いほど、撃った弾は私の右に飛んでいくのが想像付くか?」
三島は頭の中で想像し、現象を再現していく。
弾の位置と中心位置と端の位置の3点を時間で区切って整理していく。
確かに右にずれる。
「そうか、石井少尉は地球の自転と同じ速度で移動しているのですね?」
…勘はいいな…
「そうだ。地球の自転速度は一定と考えて良いが、円盤上の私の位置は中心に近いほど影響を受けにくい。
地球上では緯度と地軸に相当する半径が移動速度だ。
先程の距離では1200mでの撃ち合いだが、流石に無視できない誤差となる。その誤差が外れた理由だ」
…物理は苦手だというが、うまく説明できているか?…
自信は無い…。
「大丈夫です。理解できています。顔に書いてありますよ?」
…読みやすいのか?…
「あと三島君の悪い癖だが、全て計算でしようとする所だ。
1発目ではずした場合、2発目は当てなければならない。
君は3発撃つタイミングがあった。
今はコリオリ力が原因とわかっているが、コリオリ力を知らなくても、私は短時間で当てられる。どうやる?」
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