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「…すみません。判りません」
…考えたが、想像の外か…。
「君を撃った方法は、まさにその方法だ。ついでだから覚えておけ。
臼井君を狙撃したのは計算で調整したが、君を撃った方法は、観測射撃だ。
臼井君を撃った際の狙いと着弾点の差を君の着弾目標点に重ねた。
この方法なら精度が増すし、計算時間が要らない」
三島の目が輝く。
…理解できたようだな…
「単純な方法だが、使い分けは重要だ。
1発目と2発目以降では撃ち方が変わる。謎は解けたか?」
三島が頷くのを見ると、これだけは伝えておきたかった。
「先程は、1100m手前で浅井少尉は君達に気付いた。
臼井君は900mで気付いたが、君の射程圏が私より短く君の狙撃精度が不安定なために、接近を待つしかない臼井君は撃たれた。
残酷だが現実だ。前に言った背中を預けきれる観測手の話にあった覚悟とはこの事だ。
理解できているなら、訓練にも身は入るな?」
そう言うと、私は三島を見続ける。
三島は私を見返しながら、言葉を紡ぐ。
「はい。私は狙撃で彼を信頼させます」
そう誓った三島の目は漢の目だった。
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