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「あたしが思うに、酷い評価じゃあない気がする」
…香澄は頭痛か?…
「あたしの言う必要なくなる成果ってのは、模擬戦でやった三島と臼井の1200mの狙撃で既に成果が出ていたの」
…1200m…平均700m…900mで優秀扱い…
「ようやく朧の異次元な会話と、あたしの会話が繋がるところまで理解できたようね」
…納得まではいかないが、霧のかかったレールが見え始めてきた。
「ようは、訓練生の中で、なぜか私が凄腕扱いになっているという誤解があるのか?」
私の考えるレールはどうも違っていたらしく、由宇は突っ伏した。言葉すらない。
「あたしが、噛み砕いて、説明すると、由宇が調べた平均と、朧の射程から、既に、誤解ではなく、凄腕という評価なの。世間では。」
「調べた結果がそうならば、私が凄腕扱いに思われるのはいいとして、それが必要なくなる成果にどう繋がるんだ?」
ここで由宇が奇跡の復活を遂げる。
「もういい。香澄は疲れただろうし、俺が説明する。普通なら、あの糞教官を見返してやる!ってな感じで訓練に身が入るんだが」
私は頷く。
確かにそうだ。
それが私の立ち位置だ。
「凄腕の朧を見て、あれに少しでも近づいてやる!ってな感じで訓練に身が入ってる」
「ふーん。訓練に身が入るなら何でもいいや。ともかく嫌われ役はもう良いんだな?」
その言葉に由宇は再び頭を抱えると呟いた。
「疲れる。朧と話しててこんなに疲れたのは初めてだ。
模擬戦の時の距離が気になって香澄から朧の狙撃有効距離概算を聞いた時は、思わず聞きなおしたぞ。
大体、密林で隠蔽している1100m先の存在をセンサー類も無しに双眼鏡一つで察知する香澄も規格外だ」
「あたしも規格外ってなによ。あたしレベルなんかそこら中に」
「居てたまるか天然2号!」
香澄が膝を抱えた。
「…天然…あたしが天然…朧と同じ…天然…」
…ふぅ。まぁ元々私のキャラではなかったし……ん?…
騒がしいな…?
周りを見ると、訓練生が環を作っている。
その環がざわめいている。
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