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指令
20時、教官の個室。
由宇は天井を見上げ物思いに耽る。
流石の俺も、今日は疲れた。
今まで付き合いは訓練生時代からだから、長いとは思うがあの二人の感覚は掴みきれない。
アサルトライフルでも700mの狙撃を決めると豪語する朧…。
密林1100m先の隠蔽した狙撃ペアを双眼鏡一つで普通に見抜く香澄…。
…それが普通…か?…
…んな訳あるか。んな事が普通にできる人間がそこら中にいたら、敵にも居ることになるだろう…
現場で作戦指揮する立場からすれば、そんな能力の敵兵は悪夢以外の何者でもない。
「あの天然狙撃ペアは…」
呟くと、缶ビールのプルタブを起し、ビールを一口飲む。
小隊長という立場の自分自身を考えれば、部下の能力把握は必須技能だ。
KYP:Know Your Parsonal 私は貴方に何が出来るかを知っている。
指揮官には有名な言葉だ。
それが、過小評価しかできていない。
…過大評価よりは幾らかマシだが、過小評価も問題だなぁ…
そんな事を考えながら、更に一口ビールを飲む。
…まぁ俺に指揮官の素質云々は似合わないがな…
朧に新月の悪魔や絶対聖域、香澄に竜眼の二つ名があるように、由宇にも二つ名は存在する。
その二つ名は由宇が立案する作戦の指針から由来するが、指揮官としては問題のある二つ名だ。
…限界生存…か…
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