指令

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…?… 眠っていたと気付く原因は、恐ろしく勢いのあるドアのノックだ。 …ドアが壊れるぞ?…何時だよ、まったく… 付けたまま寝ていた腕時計を見ると、針は朝の4時を指している。 ウンザリだ。 いつまでも無視を決め込んでいるわけにもいかないので、仕方なく返事を返すと、ノックの主がドアを開けて入ってくる。 予想外の人物だった。 …葛城さん?… 「片瀬。緊急だ」 …見りゃ判るよ。4時にたたき起こされるだけの事か?…そうでなければ文句言ってやる… 「なんです?まだ4時ですよ?」 不機嫌を隠さずそう言うと葛城を見る。 葛城はベッド横のビール缶に目を留めると、疑問を口にした。 「緊急だ。酒は抜けてるか?」 …緊急はさっき聞いた…酒を気にする事態か?… 「もう抜けてますよ。酒が残ったまま葛城さん見たら悪酔いしてます」 身も蓋もない言い方だったが、次の言葉で、完全に目が覚めた。 「悪酔いして無ければいい。出撃命令だ」 「冗談でしょ?俺と浅井と石井だけで何が出来るんです?」 しょうも無い冗談だ。 小隊規模なら兎も角、分隊規模で出撃はありえない。3人兵士が増えたところで、戦場の何が変わる? 「…」 言い難そうな表情の葛城に、俺には予感がした。 ヤバイ指令だ。 「訓練生も…出撃だ」 その言葉でカッと脳内が沸騰した。 「葛城さんは夢遊病でもありますか?寝言で無ければ正気じゃない。ヒヨコに犬と戦えと命令する鶏がどこに居ます?」 それは事実だ。 だからこそ、葛城も言い出しにくかった。 「議論している時間は無い。兎も角訓練生を叩き起こしてから説明する」 葛城の表情に正気を見ると、事態の深刻さが見える。
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