92人が本棚に入れています
本棚に追加
…?…
眠っていたと気付く原因は、恐ろしく勢いのあるドアのノックだ。
…ドアが壊れるぞ?…何時だよ、まったく…
付けたまま寝ていた腕時計を見ると、針は朝の4時を指している。
ウンザリだ。
いつまでも無視を決め込んでいるわけにもいかないので、仕方なく返事を返すと、ノックの主がドアを開けて入ってくる。
予想外の人物だった。
…葛城さん?…
「片瀬。緊急だ」
…見りゃ判るよ。4時にたたき起こされるだけの事か?…そうでなければ文句言ってやる…
「なんです?まだ4時ですよ?」
不機嫌を隠さずそう言うと葛城を見る。
葛城はベッド横のビール缶に目を留めると、疑問を口にした。
「緊急だ。酒は抜けてるか?」
…緊急はさっき聞いた…酒を気にする事態か?…
「もう抜けてますよ。酒が残ったまま葛城さん見たら悪酔いしてます」
身も蓋もない言い方だったが、次の言葉で、完全に目が覚めた。
「悪酔いして無ければいい。出撃命令だ」
「冗談でしょ?俺と浅井と石井だけで何が出来るんです?」
しょうも無い冗談だ。
小隊規模なら兎も角、分隊規模で出撃はありえない。3人兵士が増えたところで、戦場の何が変わる?
「…」
言い難そうな表情の葛城に、俺には予感がした。
ヤバイ指令だ。
「訓練生も…出撃だ」
その言葉でカッと脳内が沸騰した。
「葛城さんは夢遊病でもありますか?寝言で無ければ正気じゃない。ヒヨコに犬と戦えと命令する鶏がどこに居ます?」
それは事実だ。
だからこそ、葛城も言い出しにくかった。
「議論している時間は無い。兎も角訓練生を叩き起こしてから説明する」
葛城の表情に正気を見ると、事態の深刻さが見える。
最初のコメントを投稿しよう!