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「香澄、私達も舐められたな。
私達は暗闇でシルエット位しか判らんし、冬に青々とした移動するツツジも存在するとさ。
下手糞なギリースーツだ」
そう呟きながら、銃のボルトを引き、弾薬を装填する。
「香澄は無線を…」
言葉は短い。
しかし、意味がわからない程付き合いが短い訳でもない。
「浅井より片瀬中尉へ、敵影発見。コンバットオープン要請」
告げる言葉は少ない。
告げるべき内容が少ないのだから仕方が無い。
「片瀬より浅井少尉へ、火器制限解除。
竜眼と絶対聖域の恐ろしさを叩き込む事。以上」
そして、この状況での由宇の言葉も限られる。
最後の言葉は、今までに無いものだが、それだけ無茶な作戦という事だろう。
また、訓練生を安心させる意味合いもあるのだろう。
そこに、暗視装置を外した香澄から情報がくる。
「左から右斜め前方に風量3」
その情報を狙いに加味すると、狙点は出来た。
「始める。周囲警戒」
呟きと共に私は引き金を絞る。
絞った引き金はシアを落とし、落としたシアは激発ピンを弾くと、ピンは薬室に装填された7.62mmフルメタルジャケットの雷管を叩く。
そして、雷管を叩かれたライフル弾は発火すると、後は炸薬が死を載せた鉛を銃身に沿って送り出す。
銃身で加速し減音器を通過した鉛は音速を超え突き進む。
湿度…風…コリオリ力…それらは、私の眼に映る軌道に沿って弾丸を誘導していく。
スコープの中で、ツツジがはじけると、二度と動く事は無かった。
「ヘッドショット」
そう告げると、香澄は再度無線を手に取る。
「コンバットオープン」
短いが、破壊力のある言葉だった。
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