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私の絞る引き金の方が早かった。
放たれた弾丸は、軌道を逸れることなく観測手の頭を打ち抜く。
ぶちまけられた観測手の血等を全身に浴び、狙撃手は既に狙いどころの状況ではない。
元々あいまいな狙いの弾丸は香澄の走らせた10mで明後日の方向へ飛んでいく。
移動完了のタイミングでは既に私は発射体制が出来ている。
絞った引き金に送り出された鉛は、ヘッドショットとなっている。
奴の放った弾丸の飛んでいった明後日は、奴には与えられなかった事を頭を打ち抜きながら思った。
次弾を装填し、拾い上げた二つの薬莢がポケット増える事に、心は沈んだ。
「一つ、あたしに持たせろ」
そう言って香澄は私の手から薬莢を奪う。
この間の作戦から出始めた行動だ。
もちろん、薬莢の意味は知っているのだろう。
そして、その薬莢をよこせという意味は私にも判る。
命を奪ったのは私だ。
しかし、香澄も責任を背負うという免罪符を受け入れて良いのか?という悩みに心は揺れる。
しかし、有無を言わせない香澄に反抗できない私も居る。
…作戦中だ…
そう言い聞かせ、考える事を放棄した。
少なくとも今は。
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