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装甲輸送車300m後方にまで接近するのは苦労が付きまとった。
戦場の中心に近づくにつれ、うなぎのぼりに敵の数が増えていく。
既に10人倒した…いや、私が殺した。
今日一日で13人だ。
今日の人数だけでも地獄へ落ちるには十分な数だろう。
その考えは作戦には邪魔と判っているだけに、意識しないように心がける。
「香澄、領域確保。周囲警戒…私が無線する」
事がここまで進むと、役割が変わる。
領域内の制圧後に必要なのは、狙撃手を雑務から遠ざけるのではなく、観測手による周辺監視だ。
そのため、今まで香澄が行っていた無線連絡を引き継ぐ事になる。
「石井より片瀬中尉へ、装甲輸送車周辺の安全を確保した。
積荷の移動と護衛部隊の回収を始めてくれ。ASAPよろしく」
言わなくとも判ってはいる筈だが、念には念を押してのASAP連絡だった。
As Soon As Posible・・・可能な限り早く!
とにかく急げと言いたかった。
今は訓練生の興奮が恐怖を上回っているので大きな問題は出ていないが、その興奮がいつまで持つかは神も知るまい。
「無線連絡終了。動きは?」
前方を睨む香澄は、やや緊張していた。
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