92人が本棚に入れています
本棚に追加
コンマ5秒が1年位に感じられる。
独自に鏡のように研磨したシアの傷一つ一つの段差も感じられそうな集中力で、引き金を絞りきる。
放たれた弾丸は私の眼に浮かぶ軌道を寸分違えず捉え、トレースする。
直後、光量増幅装置はハーレーションを起こしかけるが、寸前で回路を遮断する事に成功する。
着弾と同時に迫撃砲弾が爆発。
木箱の迫撃砲弾にも誘爆し、閃光と轟音が辺りを蹂躙する。
続いて、暴君と化し、周囲に迷惑ともいえる爆風が同心円を描きながら蔓延していく。
「…タリホー」
私の呟きは擦れていた。
ボルトを操作し、次弾を装填すると薬莢を拾う。
香澄はそれを取りあげ、肩からマジックを取り出すと、薬莢に無言で書き込む。
書き込んでいる時には無線機が怒鳴り声を上げている。
「片瀬だ。今の轟音は何だ!!誰でもいい報告挙げろ!!」
由宇が慌てている。
これはこれで珍しい事態だ。
”夜1600m向07-01量3.5的10mm人7”
小さい薬莢に器用に書いたそれは、そのまま私の手に戻った。
「どんだけ天然なの?あんたは」
呟いた香澄は無線機を掴みプッシュスイッチを押し込む。
「浅井より片瀬中尉へ、天然一号が迫撃砲を潰した。安心して進め」…そんな報告あるかよ…
私の考えは間違っていない。
現に由宇から無線が飛ぶ。
「片瀬より浅井少尉へ、詳細がわからん。説明を求む」
香澄は無線を聞く訓練生を煽る意味でも、詳細を再度話す。
「夜間1600m先にある迫撃砲弾直径10mmの雷管を石井少尉が狙撃。
近くにあった他の迫撃砲弾も誘爆し、迫撃砲を沈黙させた。
脅威は去ったので、進軍せよ」
一言で言い切った。
今の誘爆で敵大隊の損害は半数を越し、全滅を飛び超えて壊滅状態となった。
自棄になった敵部隊が、私と香澄の軽車両へ銃口を集中する。
私と香澄は車両を降り、車を盾にして銃弾をやり過ごす。
…あらら。これは予想外…まぁ囮にはなってるか…
最初のコメントを投稿しよう!