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後退して、他の狙撃ペアに役割の交代を…
しかし、集中砲火を食らっている状況と、交代できるだけの腕を持つ者がいない事実の前には、飲み込まざるを得ない。
「香澄は観測を続行だ。気合と根性で精度を底上げしてやる」
…ここにきて精神論を語るとは、私も無茶になったなぁ…
状況を理解できている香澄としては、与えられた役割を続けるしか方法が無い。
我慢が漢の道と言うならば、それを立てるも女の道。
香澄も腹を決めた。
「2時1100m2人…距離あるけど底上げするんでしょ?
…怪我したなら、終わった後のビールは諦めなさい」
そう言って他の敵を探し続ける。
「位置は了解したが、ビールはお預けかよ…やる気が抜けるなぁ…」
ボヤキが出せるならまだ大丈夫だ。
そう言い聞かせて、銃を構える。
ボルトを引くのも正直辛いが、出来ないわけではない。
苦労してボルトを引くと、構える。
今までの座位姿勢では肩への負担が大きい。
伏臥姿勢での狙撃に切り替える。
障害物が増える関係で狙える範囲が狭くなる。
…さすがにちょっとマズイか?…
それでも狙える範囲に敵は居た。
狙いを定め、引き金を絞る。心臓周辺に着弾。
やはり、精度は落ちているので、ヘッドショットは無理だ。
体の中心にある心臓を狙わざるを得ない。
脳を破壊するヘッドショットと心臓では、撃たれた者の痛みの度合いが違う。
極力ヘッドショットを心がけていたのだが、今はそんな余裕は無い。
再度苦労してボルト操作をすると、狙って引き金を絞る。
もう一人の方も、心臓周辺に着弾を確認。
「片瀬より浅井少尉へ、回収完了。撤収する」
…思ったより早い…
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