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慌てて構えたスコープの中で、敵が倒れる。
…コケた?…
敵は動かない。
香澄に撃つ余裕は無い。
索敵で一杯一杯だ。
「誰が撃った?」
呟きはエンジン音に掻き消された。
「臼井より浅井少尉へ、援護します。
1時520m1人風向7から1風量3三島やれ!少尉撤退を!!!」
怒鳴り声が無線を占める。
「撤退命令もあるだろうに…命令無視は独房行きだぞ…」
私の呟きは香澄には届いていた。
「味方を見捨てれば、仲間から撃たれるって教えてなかった?朧も、とっとと乗れ!」
反論するように叫びながら、香澄は私の襟を鷲づかみにすると、車に引きづり込んだ。
私を助手席に乗せ終わると、すぐにエンジンをスタートさせ、フルスロットルを入れる。
私は運転に忙しい香澄から無線を奪い手に取り叫ぶ。
「石井より各位、乗車完了、状況を全て放棄!撤退!!」
とりあえず、記憶はここまでしかない。
次の記憶は訓練所到着の少し前で、香澄に起こされた。
「っ!痛いってことは、まだ死んでないな」
「アホ言ってないで、今のうちに体力戻しとかないと、訓練所に着いたらきっと由宇に殴られるよ」
…間違いないな…
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