RTB

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「さて、命令は撤収の筈だが、なぜ残っていた?言い訳を聞こうか?」 静かな怒り。 そう表現するのが正しいのだろうか。 今の由宇は正にそれだ。 「それはっ」 話そうとする香澄を苦労してあげた右手で制し、私が口を開く。 …香澄も読みが甘いなぁ… 「いやぁ、迫撃砲の件で敵を追い込んだまでは良かったけど、囲まれちゃってね。あはは」 私の笑いに同調しながら由宇も笑い、予備動作無しの右パンチが飛んでくる。 狙いは、予想通り右肩。 …ほら来た… 言い訳を聞こうかって? 聞く気は元から無いだろうに… 右肩を後ろに引きスウェーしながら拳をやり過ごす。 …読めてんだよ… そして、私も詰めが甘い事を知る。 由宇の拳の通過と同時に右肘が曲がると、エルボーが私の顎を捉える。 …そんな隠し技を今使うなよ… キレのあるエルボーは顎を捕捉し、見えはするが避けられず、私は再度地面を転がった。 「我侭な上官としては、突然言い訳を聞きたくなくなってね」 そう言って笑う。 「そう言えば、もう一組狙撃ペアが命令違反してたな。臼井三島ペア前に」 そう言って整列していた訓練生の中から臼井と三島を前に出すと、由宇の拳が二人の頬を貫く。 もんどりうって二人が吹っ飛ぶと、二人は刈られそうになった意識をなんとか保持して立ち上がる。 「お前さん達には、命令違反という事で、罰則を適用せざるをえないな。 2日間の謹慎処分とする。 当然、命令違反は浅井少尉と石井少尉もしているので、罰は受けてもらおうかな」 …あうち、軍規は必要だが、臼井と三島は今回見逃してやれよ… 普段は糞食らえって言ってるくらいなんだから。 起き上がってそんな事を考えながら、由宇を見ていると、由宇がウィンクする。
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