投影

染みのような影

　こんな風に冷たくて激しい雨の日に､アイツは川岸で冷たくなっていた……｡
　実際には見たことが無いのに､何処までもリアルな映像が浮かぶのは､何でだろう｡背筋をぶるりと震わせて､寒さが身体に侵入してくる｡
　賑わう駅に入り､改札の前で立ち止まり､首を振る｡コンビニの前から､人が歩み寄り､
｢……豪(つよし)?｣
と少し躊躇う様に､声をかけて来たのは､思い出より少し大人びた顔だった｡
｢…柚香か……来てくれたんだな｣
その知性を表す様に稟とした色を持つ顔に､淡く化粧が施されている｡一(にのまえ) 柚香の飾らなくても､印象に残るくっきりとした目鼻立ちは､昔と変わらない｡
｢まぁね｡中に､さやかいるよ｣
コンビニを指差す｡
｢ついでになんか買ってくか｣
｢うん｣
コンビニに入り､レジの前で､これまた懐かしい顔を見付けた｡
｢さやかだよな?｣
女子高生ですと主張する様なケバい化粧とミニスカの彼女に声をかけると､
｢……ああ､豪ね｣
タルそうな興味の薄い反応を返される｡
｢なんだよ｣
と言い返すと､黒木 さやかはぷいっと顔を背けた｡訳が解らない｡
　とりあえず､俺は一リットルのペットボトル二本と百円のお菓子コーナーから適当に数種類選んで､外に出る｡
｢何､買ったの?｣
｢お茶とか諸々｡少し､時間がかかりそうだしさ｣
柚香の問いに答えるとさやかが
｢…時間がかかる? 何よ｡それ｣
と､苛々した声で俺に問う｡
｢ちょっとな｣
｢ちょっと｡って､何よ｣
｢まぁ……｣
俺が口を濁すと