ある夜の出来事

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仕事が終わるとA氏は、いつものコンビニに寄り夜食の弁当とビールを2本買った。 アパートに着くと、何を観るという事もないがテレビをつけた。 まずビールに手を伸ばし一気に飲み干すと次に弁当に手を伸ばした。 こちらはわりとスローペースに進めている。 夜食を終えるとA氏は夜の散歩に出かける。 コースはいつも同じで20分程のものだった。 5分程進むと全く民家もなく人っ気のない路になり寂れた公園が見えてくる。 ここまでは長年、全く変わらない行動だった。 全く変化のない日々。 呆れてしまう程、平凡な日々だった。 30歳を過ぎても独身で、友人はおろか女っ気すらないという以外は平凡という他、表現のしようがなかった。 公園に近づくと珍しい事に数人の人影が確認できた。 A氏は余り気にする様子もなく、いつものコースを進む。 突然、女性の悲鳴が聞こえた。 その直後、男性の怒声が響く。 何やら物騒な事態がA氏の目前で発生しているのは間違いようだ。 「助けて!!」 女性が叫ぶ。 それがA氏に向けられたものである事は間違いなかった。 女性とA氏の視線が重なる、外灯が近くにあるため女性の表情が確認できる。 一瞬、女性の目が笑っているように見えた。 既にA氏の足は止まっていた。 直後、女性は男性につかまり地面に叩きつけられる形で倒される。 男性はすぐに馬乗りになり女性の髪をわしづかみにすると、 「警察に言ったら殺すからな!!」 と言い放つと、女性のバックを奪い逃走した。 かなり小柄な男性だったが更に特徴的なのは怪我を負っているのか片足をひきずりながら逃走している。 これならA氏でも簡単に追い付き、捕まえる事も可能だった。 が、A氏はただ眺めているだけで通報はおろか女性の介抱すらしなかった。 アパートに戻るとA氏は何事もなかったようにベッドにもぐり、 「下手に関わるといろいろ面倒な事になる」 と、つぶやき部屋の灯りを消して眠りについた。
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