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「よう、速水。元気か?」
「…佐伯先生!…お久しぶりです。」
「谷口に、色々と、聞いてるぞ。頑張ってるみたいじゃないか。」
「まあ、仕事は、頑張らないと、食ってけませんからね。
それに、吉水に対して、俺は、責任ありますから。」
「君のそういう、まっすぐなところが、好きだなぁ。
ところでさ、友人に、経済関係の奴が、いるんだけどね、なんかドタバタあったみたいだね、君の身辺。」
「…どんなお友達持ってんですか?…参ったなぁ…。
で、どこまでの話を、聞いたんですか?
…言っときますが、俺は、今まで通りで、何にも、変わりませんよ。
変わる必要性ないし…変わりたくもないですから、俺は。」
「…君らしい答えだね。」
「その話は、片つきましたから、忘れてください。
そういえば、谷口に、水中撮影教えたの先生だって聞いたんですけど?」
「ああ、趣味に付き合わせているからね、いろいろと。」
「…そのおかげで、助かりましたよ。
先月、沖縄に取材旅行行ったんですが、谷口に水中撮影やってもらえたから。
佐伯先生!よくぞ、教えておいてくれた!って、小躍りしましたよ。」
「ははは…俺の趣味も、なかなか捨てたもんじゃ、ないってことかもな。
速水は、潜らないのか?」
「谷口と一緒に、潜りましたよ。
俺が、夏に潜った場所だったんで、撮るところを、指示しなきゃでしょ。
…なんてね、単に、また、潜りたかっただけなんですけどね。本当は。」
「ようし!今年の夏は、3人で、潜りに行くぞ!…速水、段取りつけろよ!」
「え~ぇぇ!俺が、ですかぁ…。わかりました。やらせてもらいます。」
こんな風に、顔見知りの人達と話していると、独立して、距離が空いてしまったと思っているのは、自分だけだったのだと、気付く。
背負った看板が、変わっただけで、俺の中身は何も変わっちゃいない…。
みんなは、俺、速水彰と、正面切って、向き合って、付き合ってくれてるのだと知るのは、発見であり、新たな喜びだった。
自然に、笑みがこぼれ、力がみなぎるのが、自分で、わかった。
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