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粉雪が舞い散る2月の初め…とある昼下がり。
「お疲れ様です。」
手袋していても、冷たくなっている手を擦り合わせながら、和樹が、事務所に入ってると、真新しい本を、速水が、いじくり倒している。
「速水さん、それ贈呈本ですか?」
「…いや、見本だ。見本をチェックしてから、製本開始してもらわなきゃな。
外側は、装丁出来やら、タイトルやロゴの位置の確認。後、紙質とかのチェックな。
内側は、テスト印刷されてる頁を見て、文字の大きさ、配列、余白部分なんかをチェックするんだ。」
「千秋さんは、チェック入れないんですか?
…姿、見えませんけど。」
「千秋は、梓さんに、拉致られた…。」
「ら、拉致られたなんて、また、過激な物言いで…。」
「…千秋のやつ、梓さんから、電話が入った途端に、出掛けて来るだってさ…。
来たばっかりだった横山なんか、半分、引きずられるみたいに、連れていかれたんだぞ。」
速水は、ちょっと、ふて腐れていた。
「…もしかしたら、バレンタインの買い物じゃあないですか?
郁美も、クラスメートと、昨日、買い物に、でかけてたから。」
「バレンタインって…俺、付き合う前も、付き合いだしてからも、千秋に、一回も、チョコひとつ、もらったことないぞ?!」
「嘘でしょ?!…本当なんですか…うわっぁ…ショックだなぁ。
僕らの憧れのカップルなのにぃ!ダメですよ、そんなの…。」
「勝手に、俺達で理想像つくんなよ、和樹…。失望するぞ…120%保障してやる。」
「そんな保障いりませんよ…速水さん!」
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